トンボの話 

12月19日の今年最後のハタヨガ基礎講座で聞いた

一つのストーリーをシェアしよう。

 

それは、トンボの幼虫とトンボのお話。

トンボの卵は、水面や水の中の植物の上に産みおとされる。

卵が孵化して幼虫になり、それは、水の中で育つ。

その幼虫は、大きくなると水中から出てきて、

脱皮してトンボになるそうだ。

脱皮してすぐの羽は、縮まっていてしわくちゃで

その羽が固まらないうちに広げる必要がある

そうして、水の中から出たトンボは

羽を広げ空へと飛び立っていくらしい。

 

ある一匹のトンボが、

水上に咲いている百合にのぼってくる。

そして、今、自分の殻を破り、幼虫から成虫へと変化し

トンボになって飛び立っていった。

 

このトンボは、水の中にいるときに、

いつか絶対にあの空を飛ぶのだ、という

ヴィジョンを持っていたのだ。

 

そして、ある時空を飛びながら

ふと思い出す。

仲間の中で最初にトンボになったものは、

外の世界がどんなかを

水中に戻ってきて、僕たちに教えてね、と

仲間と約束したことを。

 

でも、トンボになった今、

水中での生活は不可能で

もう水の中に自分は戻れないことを知る。

 

そんなトンボを水中から見ている仲間は言う。

「あいつは変わった。

 仲間だった頃のあいつはもう居ない。

 約束なんて覚えてないのだ」と。

 

水中から空を夢見て

空を飛ぶトンボに憧れていた自分は

もう死んだのだ。

そして、自分は今、孤独なのだ、と感じる。

いつか飛びたいねと夢を語り合った仲間と自分は

もう違うところに居るのだ、

そんな気持ちが、少しだけ胸を痛ませる。

 

でも、トンボになった今は、

水の中にいる沢山の幼虫たちに

インスピレーションを与える側の存在になったのだ。

 

トンボであり続けることは

簡単なことではない。

変化が起きている時というのは、

それを怖いと感じたり

孤独を感じたりする。

それはマヤ(幻想)なのだ。

 

なのに、多くのものは

怖くなったり

孤独に負けたりして

再び池に飛び込んでしまう。

それが変化が起きている時の弱点なのだ。

 

池の中に戻っても

成虫の自分には、幼虫の住む場所に

以前のような居心地の良さを感じることはできない。

かといって、外気の冷たさにも耐えられない、と

空からも逃げて行ってしまう。

 

池から飛び立ったのに、再び池に飛び込む、

そんなことの繰り返しのために

時間やエネルギーを費やすのは

貴重な生の無駄遣いだ。

 

風が止むのを待ってからにしよう、

季節が良くなるのを待とう、

もっと自信がついてから、

出来るようになってから、

そんなふうに好条件が揃うのを待って

足踏みすることなく

今、自分が持っているもの中で

ベストを尽くし、その大空を味わってほしい。

そして、いち早くもっと高いところへと

上へ上へと飛び続けていってほしい。

 

成長していくとき、

それまで持っていた特質を捨てなければ、

変わることも、進むこともできない。

トンボになるには、

幼虫の特質は死ななければならなかったように。

 

自分にとって捨てるべき特質は、なんだろう。

各自が胸に問いかけてみよう。

怠慢さ

否定的なものの考え方、

怖いと思うこと

比較を持ち出してしまうこと

時間を無駄にしてしまうこと

 

例えば、そんな特質を減らしていく必要がある。

そんな人いたよね!と過去の自分を笑い飛ばせたり

まるで他人の話を聞いているように思えるなら

それは本当に変わったのだ。

 

でも、うっかり気を抜いたら

すぐにまた元に戻るようでは

まだ幼虫の自分は死んでいないのだ。

 

するべきことをする、そんな生き方をしていたら

死は、怖いことではない。

死があるから生がある。

生があるから死が存在する。

 

幼虫から成虫へと変化していくこと。

必要なプロセスを通り、味わい、

自分の役割を、この自然界の中で果たしていくこと。

 

心にズシンと響く

お話であった。


 

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